単なる英語力では通用しないことを知った海外出張通訳

あるコンサルのお客様で、ドイツと取引きしている社長さんがいました。
その会社はキッチンを製造・販売している会社だったのですが、
長い間お付き合いしていたドイツの会社から、
ある部材が注文できなくなり、困っていました。

電話やメールしてもなかなか交渉が進まない、ということで急遽ドイツに行くことになりました。
私にも通訳としてついてほしいということで1週間ほどドイツ出張に同行することになりました。

ドイツでは先方の会社の担当者が出迎えてくれ、工場を見学させてくれたり、食事を接待してくれました。

その食事のときにビジネス交渉がはじまったときのことです。
私は先方の言うことを日本語に訳し、社長がしゃべることを英語に訳して両方の会話を通訳していました。

しかし、普通の会話として進むものの、一向に核心にせまることができないでいました。

私の通訳が十分でないこともあったのか、先方も表面的な表現しかしなく、私も仕方なくそれを訳すということが続いたのです

このまま曖昧なまま終わってしまうのだろうか、と感じ始めていたときのことです。

その社長もなかなか交渉がうまくすすまない
苛立ちを抑えきれなかったのでしょう、
ついにしびれをきらし、ブチ切れました。

「何やってるんだ、全然私の言っていることが伝わっていないじゃないか!ちゃんと訳してくれ !」

その瞬間、絶体絶命のピンチに立たされた私は、
一気にスイッチが切り替わり、立ち上がって
声を大きく出し、身振り手振りも使って通訳し始めました。

するとどうでしょう、今まで表面的にしか流れなかった会話が一気にこちらの流れとなり
相手も「分かった、分かった」と、最終的にこちらの要望を呑んでくれることになったのです。
社長が目的としていたことは達成され、交渉は成功しました

単に英語を訳するだけでは普通の仕事、それ以上の仕事をするには、英語力に加え、情熱と気合いが必要であることを学んだのでした。

この交渉の次の日は、ドイツの展示会で視察もかねていたのですが、
前日の交渉で感覚をつかんだ私は、展示会でも社長につきながら、
交渉をうまくすすめることができました。

一番大きい収穫は、スワロフスキのガラス入りの
キッチンハンドルのある製造メーカーとの交渉で、
当時日本における独占販売契約の交渉に成功したことです。

ちなみに、ドイツで一番驚いたのは車のスピードの速さです。
最終日の夜にその担当者が車で空港へ
送ってくれたのですが、高速道路に入った瞬間、
爆速で加速し、時速200キロ以上で走り抜けました。

全く予想していなかった私達は、なされるがまま恐怖と驚きでずっと叫んでいました。

ドイツでは「アウトバーン」と呼ばれる
速度制限が解除される区間の高速道路があり、
夜などは車が爆速で走っているのです。。。

目次